ラブラブカップル

多くの女性を確保しようとする男性に対し、優秀な男性を束縛しようとする女性……生物学的に見れば「男の愛は量で、女の愛は質」だと言うこともできますが、その根本となるものは一体何なのでしょうか?ここでは雑文ながら「人はなぜ恋に落ちるのか?」ということについて、科学的にお話してみたいと思います。

【1】トキメキの正体はPEA

PEA注射されたマウスのカップル

恋愛の正体を探るためには、人が恋をしている時と、していない時の違いを知る必要があります。これは既に様々な研究により、人は恋に落ちている時には脳内に、PEA(フェニール・エチル・アミン)というホルモンが大量に分泌されるということがわかっています。

PEAは、科学者達の間でも「惚れ薬」などとよばれていて、その効果は絶大です。どのくらい絶大かというと、まったくオスに興味を示さないラットのメスにこれを注射すると、物凄い勢いで目の前のオスと交尾をしだすほどです。つまり、性欲を極端に高めるホルモンなのです。

PEAの効果はそれだけではなく、神経という神経を敏感にさせ、眠気を吹き飛ばし、向上心さえも高めるという力を持っています。そして最大の特徴はなんといっても、尋常ではないほどの快感を私達にもたらすということです。

恋をすると、それだけで人生がバラ色に見えたり、やる気が起きたり、眠くても会いたいという気持ちになるのは、このPEAの仕業によるところが大きいのです。PEAこそが恋の正体であると言われて久しく、とにかくこのホルモンを分泌させてくれた相手に人は恋をしてしまうようなのです。

【2】ラットに注射したものとは

特筆すべきはPEAは恋をすると分泌されるのではなく、PEAが分泌されると恋に落ちたと錯覚してしまうということが、数々の研究により明らかになっていることです。

つまりは、相手にこのホルモンを分泌させることさえできれば、間違いなくベタ惚れにさせることができるのです。ウソではありません。実際にこのPEAを女性に注射して、恋の虜にしている男性は存在しているのです。

「マジ!?どこに売ってんの?」そう思ったあなた…。残念ながらPEAの主成分は覚○剤として認定され、世界規模でその使用が禁止されています。ラットのメスに注射したのは、まさしくこれだったのです。

言い換えれば人間は、脳内でこの強力な物質を作り出すことができるという、素晴らしくも恐ろしい生き物です。魅力的な異性を獲得するために、多くの人が想像を絶する努力をするというのも、全てはこの物質を自らの脳内で分泌させるためだといえそうです。

PEAの主成分剤

【3】PEA=脳内麻薬

その言葉が示す通り、このホルモンの威力は強大です。では人は一体どのような時に、このPEAを分泌するのでしょうか?それさえわかれば、恋愛の勝者になることができます。

恋愛を科学的に分析した著書をいくつも出版しているラトガーズ大学の人類学者 ヘレン・フィッシャー教授によれば、主に以下の3つのものに対してだと言うことです。

PEAが出る3つのモノ

新しくて魅力的なもの
もう少しで手に入りそうなもの
自分から遠ざかっていくもの

つまり、初対面であなたのことを魅力的だと思った異性に対し、優しくして超イイ感じにしておいて逃げるというようなことをすれば、その人はあなたにメロメロになるということが理論上いえます。「恋は追うと逃げる、逃げられると追いたくなる」ということは科学的にも説明できるワケです。

【4】恋は4年で終わる?

平均的なカップルのPEA分泌量の推移

良いことづくめのPEAですが「同じ相手に対しては3~4年で殆ど分泌されなくなる」と言われています。これが、前出のヘレン・フィッシャー教授が唱えている「PEA 4年周期説」というやつです。それはどんなに情熱的な恋でも、その状態が4年以上続くことはないことを示唆しています。

世界的に見ても、最も離婚の多い時期というのは結婚してから3~4年後付近に集中しているというのも、この説の有力性を裏付けています。

なぜ、このようなことになっているのかというと、PEAのような強力な快感をもたらす物質がずっと分泌されていると、それを受け止める脳内の受容体が破壊されてしまうため、必ず「飽き」というものがくるように人間の体が作られているからです。実際に麻薬中毒患者の脳内を調べてみると、その受容体は完全に破壊され、快感を感じない体になっているといいます。

さらに、身体の防衛機制も関係しています。たとえば、あまりにも長い期間、熱烈な恋愛をしていると、その間はロクに食事をしなかったり、睡眠をとらなかったり、動機が激しいままだったりするでしょう。そんな状態が長期間続くことが、体に良いワケがありません。

適度な恋愛は体にとって良いのですが、長期間の熱烈な恋愛は、寿命を短くするだけなのです。「熱烈に愛し合って結婚したのに、もう何とも思わない…」そんな風に悩んでいる人も多いかもしれませんが、それは極々自然なことなのでまったく心配する必要はありません。

【5】不安な時しか分泌されない

PEAは不安な時しか分泌されない

最後に1つ、とても大事なことを。PEAは、不安な時や緊張している時にしか分泌されないという特徴があることをお伝えしておきます。

大好きな人を目の前にしたら、誰だって緊張します。その緊張がPEA分泌の呼び水となり、恋がはじまるワケです。それは、大富豪でもアイドルでも一般人でも皆同じです。

なので「異性の前で緊張しない方法はありますか?」というのは、愚問です。なぜなら、不安や緊張なくして恋が始まることなどありえないからです。

どうしても緊張せずに恋を始めたいという人は、非魅力的な人と恋愛する以外に方法はありません。緊張屋さんには悲報かもしれませんが、やはり「恋愛には緊張は付き物だ」と割り切る以外に方法はなさそうです。